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イワツバメの自然営巣

2015年8月1日

一度、見てみたいと思っていた。イワツバメの調査を始めた12年前からずっと。文献などでは記されているが、どんな場所に巣を作っているのだろう。北信のとある山で、イワツバメの自然営巣が見られるという。

晴れ、気温20度。湿度が高く、蒸し暑い。クサギやリョウブ、ノリウツギの花が咲いている。目的地を目指し、急な登山道を進む。ヒガラ、ウグイス、ミソサザイのさえずりが聞こえる。ブナが出始めるところでクロジの声を確認。谷底でコマドリがさえずっている。コエゾゼミと思われるセミの声が林内に響く。

アクシバの花は終わりかけ。なんとか数輪だけ観察できた。シモツケソウの桃色が濃い。ツルリンドウの花は初めて見る。ホツツジは花の形が素晴らしい。

1時間ほどで目的の岩場に着き、巣を発見した。すでに巣立ったようで静かだ。霧のなかから、時折、イワツバメの声が聞こえた。いまでは、イワツバメの営巣はほとんどが市街地やダム、河川にかかる橋などで、このような自然の岩場での営巣例は少ない。本来は山の岩場や海岸などの岩壁に営巣していたものが、次第に人工物に営巣するようになった。1920〜1940年代にはすでに人工物への営巣が報告されている。こうした習性を獲得した背景には、どんな理由があるのだろう。また、人工物と自然の岩場で営巣する個体は、生態の違いはあるのだろうか。彼らの歩んできた軌跡を紐解くためにも、自然営巣の記録は重要である。情報を提供していただいたKSGさんに深謝したい。