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書評的本棚

 

科学者が人間であること

中村桂子(著)、岩波新書、2013年

多くは書きませんが、「知る」と「わかる」について、また、「理科」と「科学」の違いについて整理し、考えることができました。広く、バランスのとれた内容で、テンポ良く進んで行く印象です。

 

 

バイオロギング 最新科学で解明する動物生態学

日本バイオロギング研究会(編)、京都通信社、2009年

日本鳥学会誌 59:91 2010年 (書評)↓

http://ornithology.jp/osj/japanese/katsudo/Journal_J/data/JJO_59_91.pdf

 

 

集めて楽しむ昆虫コレクション

安田守(著)、山と渓谷社、2007年

四季別にさまざまな昆虫が紹介されていて、昆虫に詳しくない人も楽しめます。この本で面白いのは、いくつかの虫のフンが載っていることと、「ほぼ一生集め」のシリーズ。ナナフシモドキを飼育し、幼虫から成虫が死ぬまでに食べた葉を一生分集めたり、そのときに出たフン(5094粒)が実物大で掲載されていたりと、その発想に驚きました。このユニークさが本書の売りではないでしょうか。撮影された写真からは飼育ばかりではなく、著者がかなりの時間野外に出ていろんなものに関心を向けていることが伺えます。

僕は2004年、著者の安田氏にリュイスアシナガオトシブミの標本をいただき、昆虫を観察・採集するようになりました。

 

 

なぞの渡りを追う オオヒシクイの繁殖地をさがして

池内俊雄(著)、ポプラ社、2004年

新潟県の朝日池で亜種オオヒシクイを見て、オオヒシクイという鳥が気になって本書を購入しました。

日本には約9000羽のオオヒシクイが渡ってきますが、その内の7000羽以上が新潟県内で越冬するといいます。それでは、繁殖地はどこなのでしょうか? どんな巣を作り、どんな卵を産むのでしょうか? ここでロシアの鳥類学者、ニコライ・ゲラシモフが登場します。数年前、立教大学でゲラシモフ博士の講演を聞いたことを懐かしく思いました。博士は1986年の7月にズベズドカン湖(カムチャツカ)で、福島潟で首環をつけられたオオヒシクイを確認します。換羽期の観察ですので、そこで繁殖しているわけではありませんが、繁殖地は近そうです。こうして、オオヒシクイの繁殖地を探す旅は続いていきます。

著者やゲラシモフ博士たちは、カムチャツカのクラスナヤ川で亜種ヒシクイの巣卵を発見しました。しかし、オオヒシクイの巣やヒナは見つかりません。つぎに、福島潟でオオヒシクイを捕獲し、送信器を装着する調査に切り替えます。最終的には2羽のオスがカムチャツカに到着しました。そこは、ズベズドカン湖の近くでした。電波をたよりにオオヒシクイを探します。すると、送信機とは別につけられていた地上用の発信機の電波をキャッチしました。発信音から、2羽のオスとは別個体と判明。でも、姿は見つかりませんでした。

さらに別の場所でオオヒシクイを探すことになります。そして世界で初めて、ヒナをつれたオオヒシクイを発見しました。オオヒシクイとヒシクイでは、繁殖地の環境や子育ての方法が違っています(オオヒシクイの巣卵はまだ見つかっていません)。なぜ違っているのか、その要因を考えていくのも面白いテーマです。僕は、この2亜種がどういうふうに分岐したのか、どのようにしていまの生活史を獲得したのかが知りたくなりました。