2018年6月17日
甲州へ、晴れ。目的の渓への道を下見する。ヤマボウシとカンボクの花のまぶしい白。待ってくれないフェノロジー。クロジがさえずり、ブナが生えている。ヤマブドウの花が咲き、ミヤママタタビの葉に色がついてきた。開花に由来するのか、ニホンジカによる摂食か、その両方なのか、多くのササが枯れている。コマドリとソウシチョウの声。
せっかくなので、この支流のイワナの色を見ておこう。水温7.9度、標高は1500mほど。ゼフィルスが飛ぶ。釣り師の多い、いわゆる激戦区で竿を振る。ボサの下や小さなポイントを狙ってイワナを2尾抜いた。地つきのような色だ。
キジの剣羽の毛鉤を使用。自分で使う毛鉤なのに、たいして検討もせずに盲目的に剣羽を信じた結果、それが自身を否定することに繋がると2尾のイワナが教えてくれた。素材選びの根幹に関わる事柄。水の流れによって毛鉤を使い分ける、というより毛鉤を作り替える。どんな渓でも使えるように、道具を合わせないといけないのだ。と考えていた直後、剣羽の毛鉤で9寸のイワナを上げる。まったく。これから当分、剣羽の毛鉤の使用を禁ずる。
堰堤の上にプールがあり、尺近いイワナが数尾泳いでいた。止水域に強いスズメの風切羽をみの毛にした毛鉤に交換。目線の先に落として誘いをかける。数回、これを繰り返すと、まっすぐにこちらに向かって来た。水中にある毛鉤をくわえ、反転する。が、はっきりと姿が見えている個体でまさかの合わせ切れ。未熟の極み。しばし水中を見ていると、口に毛鉤をつけたイワナが出てきて、水面に浮いていた虫に飛びかかった。順毛鉤にして水面を叩くが、見破られる。毛鉤のバリエーションがなくなったので、お守り代わりに持っていた松本のおばちゃんがくれたものをつける。首尾良くその個体をかけ、口についていた毛鉤を回収した。ほかの人が巻いた毛鉤を使ったのは十数年ぶりだ。ハリス切れでバラしたイワナを数分後に釣り上げた話は本で読んだことがあったが、それを自分で体験するとは。そして、1箇所で90分以上粘るのも初めてのこと。尺には届かない28センチのイワナだった。ただこれは、自分らしい釣りではない。