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紙上の景観と音

 

紙の上の生きものの世界

童謡や童話、物語などのなかにある景観と音をたどる

 

たき火

晩秋に口ずさむ童謡。歌詞には「北風」や「木枯らし」など、思わずたき火にあたりたくなるフレーズが出てくる。路上に落ち葉が増える時季の、風で転がる乾いた葉の音。煙の匂い。市街地では、落ち葉で焚き火のできる場所は限られているだろうな。この歌は東京で作られたということなので、サザンカは自然分布ではなく植栽だろうか。(2014.12.1)

 

 

鶺鴒鳴

七十二候のひとつ、「鶺鴒鳴」。9月12〜17日ごろで、セキレイが鳴き始める時期らしい。私たちの身近にいるセキレイ類はハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイの3種類と思われる。「鳴く」というのが「さえずり」を指しているのだとしたら、ここでいう鶺鴒はセグロセキレイだろう。セグロセキレイは秋にもよくさえずる。キセキレイは春から夏にかけてさえずり、それ以外の時期には聞いたことがない。ハクセキレイは繁殖期以外でもさえずることがあるものの、セグロセキレイほどではない。そもそも、七十二候が日本風に改訂されたとき(江戸時代といわれる)に、ハクセキレイは身近な鳥だったのか気になるところ。(2014.9.20)

 

セグロセキレイ

 

秋の七草

ハギ、ススキ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、キキョウ、フジバカマが秋の七草と言われている。ハギ(ヤマハギ、マルバハギ)、ススキ、クズ、ナデシコ(カワラナデシコ)は比較的よく見られるとして、オミナエシとキキョウはどこにでも生えている植物ではない。フジバカマに至っては、僕は野生のものを見たことがない。8〜9月の自然観察の楽しみのひとつは、これら秋の七草を探すこと。今年は、フジバカマ以外の花は見ることができた。(2014.9.10)

 

オミナエシ

 

虫のこえ

夜の虫の声がよく聞かれる時期になった。

童謡の「虫のこえ」には、マツムシ、スズムシ、コオロギ(キリギリス)、クツワムシ、ウマオイが出てくる。僕はおもに、関東甲信越と三重県で生きものを見ているのだけど、クツワムシの声は関東の1箇所でしか聞いたことがない。ほかの虫の声は、いろんな場所でまだ聞くことができる。ただ残念なことに、多くの場所ではアオマツムシの声が多いのだけど。(2014.9.1)

 

マツムシ

 

かっこう

小学校で歌ったこの歌は、ドイツの童謡らしい。

日本語の歌詞は2通りあるようで、それらに出てくる“もり”、“たに”、“きり”。カッコウの声は草原や疎林、河川敷、場所によっては市街地などで聞ける。“きり”と“たに”はいいのだけど、あまり“もり”というイメージはない。「はやし」ならぴったり。(2014.6.3)

 

 

春の小川

小学校の音楽で習う、「春の小川」。

この歌の歌詞には“すみれ”、“れんげ”、“えび”、“めだか”、“小ぶな”という生きものが登場する。

現実の状況に当てはめてみると、“すみれ”はスミレかタチツボスミレだろう。作者がじっさいに見たものなのか、作者の想像なのかはわからないけれど、“えび”、“めだか”、“小ぶな”がいる、見えるのは流れが緩やかな川、あるいは小さな「わんど」になっている場所がある川なのかもしれない。“めだか”がメダカなら、それはもう見られないだろうな。(2014.5.26)