2018年7月8日
あの渓の源流を釣るには、左岸を通る林道を行けば楽そうだ。でも、昨年下見をしたときには通行止めになっていた。迂回できるルートはない。ダムがあるため、川通しには上がれない。地形図を見ると、北西側の主尾根には登山道があった。この登山道を使い、枝尾根を下れば目的の渓の源頭に着けるはず。枝尾根には道がないので、地図で位置を確認しながら進む必要があろう。この距離ならなんとか日帰りで行けそうだ。
人家のナンテンの花が咲き、草地のヤブカンゾウもそろそろ咲きそう。西側地域の川の水量の多さに不安が募る。が、数日前から確認している雨雲レーダーを信じて向かう。今年1回目の山越えの釣行。山越えの果てに、釣りにならないほど増水していたら、ただの山歩きになってしまう。不安が募る。が、直近の渓の水量はさほど増えていなかった。
林道からはすぐに高度をかせぐ急登。鳥の鳴き声の少ない登山道を進む。遠くからビンズイ、メボソムシクイ、ルリビタキのさえずりが聞こえた。サラサドウダンの花期はもう終わり。樹林を抜け、部分的に開けた場所に出た。ここの風景に見とれるものの、峠までは1時間で着いた。この後の行程を考えると、さらに時間を短縮しなくてはいけない。地形読みを怠り、予想よりも時間がかかっている。平坦なところは小走りで通過。分岐のピークを過ぎ、ここからはGPSでルートを確認しながら枝尾根を下る。林床はニホンジカの強い摂食を受けていた。沢音が徐々に大きくなる。最後の急な下りでもたつくが、なんとか3時間で目的地に到着。両岸の植生、水量ともに申し分はない。
左俣は思ったよりも細流なので、右俣を遡行する。さっそく、たまりに魚影が見えた。水温が17度もあるのが気がかり。竿を出し、十数メートル行くとヤマメが釣れた。その後も続けて2尾のヤマメ。イワナがいなさそうな予感がするので、ヤマメ狙いでポイントを点で叩く。ニホンジカの毛を使った毛鉤に交換。鋭い出方が懐かしい。良いポイントには必ずヤマメがついている。大イワナのいる渓という響きにほだされて来たものの、2時間ほど釣り上がったがイワナは確認できなかった。
帰路、登山道沿いの樹林が途切れて視界が抜けた場所で立ち止まると、ハリオアマツバメが1羽飛んでいた。その個体を目で追っていると、林内に入って行ったようだった。
今朝通った峠には、もう西日が射している。憧憬のササ原に心を持っていかれる。延長11km、高低差1000mの道のり。往復7時間40分の山歩きでは、対話の時間はたくさんあった。さて、つぎの山越え釣行では、隣県のあの渓の核心部の入り口にアプローチしよう。