2016年8月7日
クサギやヌルデの花が咲くころ、低山帯や山地帯の鳥の繁殖は終盤になる。さえずりの少ない山道を歩く。クズの花の香りが思い出を連れてくる。ツクツクボウシの声を聞き、半日陰のフシグロセンノウに近づく。
ニゴマン(地形図)を見ているとき、梓川の支流に気になる沢があった。渓魚がいそうで、あまり人が入っていなさそうで、なおかつ魚を放流していなさそうな場所。車止めから林道を歩き、良さげな流れになるまで竿を出さずに沢を詰める。チッチゼミが鳴いている。
川幅が狭くなったところで入渓。小さな滝が連続する見事な渓相だ。思ったよりも歩きやすいが、落石が多い。魚影は薄い。黄色になったオニグルミの葉が落ちてくる。カツラの甘い香りが心地いい。流木の下の流れから、約8寸のイワナを抜く。この渓は水の流れが速いからか、イワナの体高は体長の割に広い。
そのとき、たまたま近かっただけ。ぬぐい、隙間を探す。どこか他人事のような現実。あのときと変わらない時間。沢の水の流れを遡り、滝の上、曲がりの先の風景を見たい。