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ノビタキの記憶

2012年9月26日

山梨県都留市の農耕地。多くの田では稲刈りが終わっている。きょうはノビタキ探し。都留市ではノビタキの滞在期間が短いから、この時期を見逃さないようにまめに通っている。

垣根のイチイの実が熟し始めた。稲穂の上をアキアカネが飛ぶ。セイヨウタンポポの花が咲いていた。サシバでも出ないかと空を見るが、トビばかり。遠くでミンミンゼミの声。稲ワラと湿った土の匂いを含んだ秋の風。モズが鳴く。ツバメが2羽、近くをかすめて飛んで行った。9月も下旬になり、ツバメの数も減ったな。

いまから10年前、ここで初めてノビタキを見た。秋の渡り中の個体だ。記憶を辿ると、そのときよりもさらに10年近く前に僕はノビタキに出会っている。三重県の実家の近くで。種名のわからない鳥として。

セグロセキレイがぐせる。刈り取った稲の上に、ノビタキを発見。2羽いる。遠くてよく見えないので移動。しばらく歩いたところで3羽を確認。ここは毎年いる場所だ。狭い農耕地でも、いる場所といない場所があるようだ。ノビタキを観察して安心して帰る。

歩き慣れた場所に、ある日突然、見慣れぬ鳥が現れる。そしていなくなる。この不思議は、少なくとも僕にとっては生きものを好きになる、疑問の内側に切り込む起点になっていることは間違いない。そして、春や秋にフィールドを通過して行く鳥は、季節がたしかに進んでいることをそこはかとなく教えてくれる。

 

ノビタキ