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やさしいゴルジュ

2019年5月2日

2月から林道が通行止めになっている。目的の渓の様子を尋ねた地元の知人からの情報。今シーズン最初の釣行は、実家の近くの渓になった。通行止め箇所の下流を右に折れる。4月29日からの雨がどのぐらい残っているだろうか。

ツツドリ、エゾムシクイ、ヤブサメ、オオルリのさえずりを聞きながら歩く。カジノキと思われる木が生えていた。ムベの花が落ちている。トラフシジミが飛ぶ。林道を2.8km進み、河原へ。地形図とは異なり伏流水になっていて、この先に水があることを知らなかったら引き返していただろう。先客がいるようだったので、竿を出さずにしばらく歩く。流れが復活して早々に魚影が走る。

テンカラとは違い、エサ釣りは進む速度が遅い。先客にはすぐに追いついた。70代のエサ釣り師だった。もうすぐ引き返すというので、先に進むことに。約300m先のY字分岐まで一気に歩く。河原に下りてから1.8km。地形図を見ると左俣のほうが厳しそうだったのでこちらを選ぶ。

先月届いた新しい竿の調子を確認しながら遡行する。使うのはキジの逆さ毛鉤。降雨によって水かさは15cmほど増えていた。水温は14度。危険な場所のない歩きやすい渓だが、メマトイが多い。竿入れから20分ほどで1尾目のアマゴがかかった。その後もよく釣れるものの、良場でも型が小さい。そして痩せていた。約400m釣り進み、引き返す。チドリノキとユズリハの花が咲いている。羽化したばかりのヒメクロサナエ。あの石垣は住居の跡だろうか。

せっかくなので右俣にも入ってみたが、こちらのほうが魚影が濃い。ふと振り向くと、急流の岩場を掛け登って水に飛び込むカワネズミが目に入った。少し見ていたが出てこない。そこから10mほど上流でライズのように見えたのは、泳いでいるカワネズミだった。さっきのものとは別個体だろうか。水に潜り、水辺を移動している。動きが速すぎてカメラで追えない。淡色のマムシと、とぐろを巻いたヒバカリを見る。アリドオシのトゲは、その実を食べる鳥も手こずりそうだ。

年に数回、食べることが目的で渓魚を釣りに行くことがある。今回感じたのは、食べるための釣りと、釣ることが目的のときでは狙うポイント、合わせのタイミング、踏み込む位置が微妙に違うということ。持ち帰るときは魚との駆け引きや勝負をしていない。どちらが良いというものではないけれど、その日のテーマによって姿勢が変わる。でも、渓魚が釣れることがいつも正解とは限らない。