2019年7月15日
あの支流が“良い渓”であることを知ったのは今年の1月。この流域の地形図は何十回と見ているので、支流の存在には気づいていた。しかし、林道から見える本流との出合い部分の景観があまりにも残念なので、とても釣りに入る気にはなれなかった。
夜明け前に家を出発。弱い雨が降っている。目的の支流に行くには、Mの本流を渡渉する必要がある。連日の雨による増水はどの程度だろうか。霧雨の林道を進む。眼下に見える流れは濁りが強く、水量はとても多い。ミゾゴイらしいものが飛ぶが、すぐに見えなくなった。
林道の真ん中に、ツキノワグマのフンがあった。サクラ類の種が大量に入っている。オニグルミの若い実を囓っているのは、サルだろうか。シカの姿はよく見かける。オオルリのさえずりが聞こえる。ある場所で、甘い匂いがした。香源は花ではなさそうだ。懐かしいような、初めてのような。天気が悪いのでエゾハルゼミは鳴いていない。
80分後、出合いに着いた。本流は場所を選べばなんとか渡れそうだ。しかし、例の支流には絶望的な赤濁りの水が流れている。さすがに諦めるしかない。じつはもうひとつ、このさらに上流にも“良い渓”があると聞いていた。そちらへ向かうことに。10分ほどで到着。濁りもなく、水量も多くない。900mほど流れに沿って歩くが、魚のいなさそうな渓だ。カツラとサワグルミが多い。水温は12度。何はともあれ、竿を出す。500mほど釣り上がるが、小さなイワナ1尾だけ。魚影も見えない。
帰路、右岸の支流に入る。キハギが咲き、クサギももうすぐ咲きそうだ。シナノキで吸蜜するキバネセセリ。最終堰堤までは竿を入れずに歩く。2.3km。トウヒやチョウセンゴヨウ、サルオガセ類が目につき、徐々に山岳渓流のような様相になった。水温は13度。河床の色も少しは良い。流れから8寸のイワナを抜く。この支流のイワナは、本流の源流部と同じような色をしている。その後も8寸弱のイワナが釣れる。先ほどの個体と同様の色だ。
地形図を見ていると、この先の尾根を越えて、核心部にアプローチしたくなる。もう一度。今回、いくつかの壊れた堰堤を見た。なかには40年以上前に作られたものもある。これらの堰堤は、水が出ればイワナが遡上できそうなほど壊れていた。
渓に入ればイワナはきっと釣れる。問題は、どう釣ったか、どうやって釣れたか。