2019年10月27日
通い慣れた場所の紅葉は写真を撮ることもなく、乗鞍岳の目的地に向かう。通過するこの樹林も、ゆっくり歩けば楽しいのだけど、いまはそのときではないだけ。調査研究の善し悪し。
無風で薄曇りの穏やかさが怖くなる。前から気になっていた、標高2200m付近から白骨温泉への登山道。最近の地形図には記載がないけれど、24年前に発行されたものにはちゃんと載っている。いまは道の一部が崩落しているらしい。
高山帯に来ると少し風が吹いていた。稜線付近まで登ると風が強く、霧も濃い。小さな氷の粒が飛んできて痛い。上部の調査地は25cmほどの積雪があった。ハイマツの上に雪が積もり、幹が曲がっている。ライチョウの声が聞こえた。
ホシガラスの貯食行動は継続中。樹上の球果はもうほとんどない。高山帯に一時的に隠した場所が雪に埋もれるまでは飛来するのだろう。実験の経過を見て回る。“ホシガラスがハイマツの種子を貯食している亜高山帯に、ハイマツが生えていなのはなぜか?”。文献や経験から予想はつく。でも、実験を通して確かめたい。その結果は予想通りだったのだけど、失敗と思しき事柄から、種子の発芽・定着の特性に関する新たな、そして重要な発見があった。追い込まれてからの、闇に手を入れて探る一手。
時間のかかる野外実験の善し悪し。「そうだと思う」と「そうだった」は、仕事ならともかく、研究をする上での意味合いはとても大きな違いとなる。それが現時点という条件つきの結果だとしても。山小屋を買う話は流れたので、つぎにつながる何かをしよう。