2018年7月21日
核心部への釣行は、今年はこれで最後にしよう。その日に帰れない場合も想定し、テントを持って行く。この渓のイワナの色を、どうしても見ておきたい。
大雨の後、2週間が経ち本流はもう平水に戻っていた。だが、水中の砂と礫がまだ多い印象。上流はどうだろうか。
車を止め、林道を進む。クサギ、タマアジサイ、クズの花が咲いているのを確認。シナノナデシコ、アオツヅラフジも咲いていた。イケマで吸密するキバネセセリ。カラマツの植林地の林床は、イケマとヒトリシズカの群生地になっている。ニホンジカが食べないから残ったのだろう。オニクルミの葉が黄落し、カツラもほのかに甘く香る。
林道を2時間行き、そこから登山を開始。この山を越えると林道15km分を短縮できる。標高差は約1000m。踏み跡程度の道を、GPSを頼りに詰めていく。急登と暑さで体力を消耗し、時間がかかってしまった。自分がどこにいるのかを一瞬忘れてしまうほどの辛さ。山頂の一部は針葉樹林帯で、ルリビタキ、3拍子のメボソムシクイのさえずりが聞こえた。初秋を思わせる風が吹いている。そこからは一気に渓まで下る。ゴヨウマツとチョウセンゴヨウが生えていて、散布者が気になるところ。
駐車場を出てから5時間40分後、目的地に着いた。山越えに3時間40分もかかってしまうとは。手早く昼食を済ませ、釣り上がる。大雨で水位はかなり上がったようだが、河床の石はあまり動いていない。水温は17度と高く、上流部なのに大川を釣っているような感じで、5.8mのラインをめいっぱい振れる。淵はなく、釜も少ない渓相。泳ぎを覚悟で来たものの、そんな場所もない。1kmほど釣り、8寸前後のイワナを5尾上げた。その日のうちに帰れそうなので、来た道を戻る。駐車場が近づくと、ヒメボタルが飛んでいた。きょうの活動時間は13時間45分で、その内、釣りは2時間しかできなかった。渓魚が釣れるか釣れないか。ただそれだけのこと。単純な結果のなかに、本質的な楽しさと奥深さがある。