2018年8月3日
長野県富士見町で、ロードキルのキジのメスを拾得した。翼や尾、体羽の状態を観察すると、成鳥冬羽への換羽中だとわかった。初列風切の換羽スコアは12で、尾羽の換羽はまだ始まっていない。尾羽は長く、先端が摩耗していること、体羽も摩耗していることから、今年生まれの個体ではない。虹彩は黄色味がかっていて、頭部の羽色も幼羽のそれとは違っていた。当然のことながら、蹴爪はない。成鳥冬羽への換羽が完了するのは、8月末以降だろうか。
僕はこれまでに、ヤマドリの死体を4回拾得している。2006年9月21日(山梨県)、2016年7月19日、同年10月10日、そして2017年7月31日(3個体は長野県)。これらはすべて、羽の状態からその年生まれの個体だと思われた。7月の2羽はほとんどが幼羽で、7月19日の個体はすべての初列風切が伸長中だった。9月と10月の個体は、体羽と風切羽を換羽中だった。つまりヤマドリは、例数は少ないものの、幼羽から第1回冬羽への換羽で全身の羽を換えるようだ。そして、ヤマドリの第1回冬羽への換羽が完了するのは、10月中旬以降と思われた。
キジとヤマドリは種は違うが、同じキジ科に属している。キジの仮剥製はこれまでに数羽作製しているが、そのなかには幼羽から第1回冬羽への換羽様式がヤマドリと同様と考えられる例があった。秋以降に野外で、茶色の体羽を残したキジのオスを見かけないことも、この換羽様式を支持する。しかし、オスとメスで換羽様式が異なっていれば、メスには当てはまらないことになる。もし、オスとメスで換羽様式が違うとしたら、そこにどんな適応的意義があるのだろう。わずかな例の、それもキジとヤマドリという別種をあえて比較することにあまり意味はないかもしれないけれど、成鳥と幼鳥で換羽の完了する時期が違うことが示唆された。このような例は、幼羽から第1回冬羽への換羽が完成換羽である複数のスズメ目鳥類で見たことがある。